コラム
プロネクサスベトナム現地レポート(2020年12月 VOL.15)
プロネクサスベトナムが、ベトナム現地情報をお伝えいたします。
今回のテーマは、【ベトナムの日常生活 金(Gold)へのニーズ】についてご紹介します。
【金(Gold)需要について】
ベトナムでは、金(Gold)のアクセサリーや小物の需要が高いことをご存じでしょうか。性別や年齢を問わず、多くのベトナム人が金のアクセサリーを着用しています。なかには、幼児に着用させている家族も見られるほどです。なぜベトナム人は、これほどまでに金のアクセサリーに対するニーズが高いのでしょうか。
それは、自国通貨への不信感のあらわれといっても良いかもしれません。
米ドル・ベトナムドンの為替レートは、常にドン安傾向にあるため、ベトナム人が資産を形成するための手段として、自国通貨であるベトナムドンを避ける傾向にあります。また、ベトナムの歴史において、通貨制度が不安定だったことが、銀行預金で資産形成することに積極的でない潜在的な一因であるといわれています。その結果ベトナムでは、資産形成の手段として、銀行預金よりも不動産や金などの現物資産に資本が集まっていることは、近年の不動産市場が活況であることからも窺い知ることができると思います。
【アクセサリー業界での特有文化】
上記のような資産形成のための金のアクセサリーへの需要を受け、ベトナム国内のアクセサリー業界では、日本とは違った特有な文化のようなものがあります。それは、「中古品や買い替え」に関するものです。
日本では、一度購入したアクセサリーを同じ販売店に中古として売却することは、稀なケースであると思います(特段の事情があれば別ですが)。また、アクセサリーにおいては既存の製品を下取りに出し、新しい製品を購入することも、日本人のあいだでは、少数派の意見ではないでしょうか。
一方、ベトナム国内では下取り・買い替え需要が高く、商取引として一般的であり、あるアクセサリーショップでは、販売時の契約書に買い替え時の下取り料率や買い戻し料率があらかじめ記載されております。
売買契約書に記された各種料率
※買い戻し:70%、買い替え下取り:80%、との記載あり 筆者撮影
【ベトナムの金のアクセサリーの特徴と注意点】
ある日系貴金属メーカーの担当者の話では、ベトナム国内で販売されている【18金】の製品は、日本や世界の国際標準規格の【18金】の水準に、満たないものが多く出回っているとのことです。
前述のとおり、金製品の中古市場が発達によって再販前の研磨作業が繰り返し行われることで【18金】の規格に満たない製品が多く流通してしまうのではないかと推察されます。
アクセサリーショップに陳列された製品の様子
筆者撮影
最後に、 コロナ禍においても経済成長(直近の7~9月のGDP成長率は+2.62%)が期待されるベトナムにおいて、ベトナム人の所得水準も年々上昇傾向にあります。
一方で、ベトナムは「製造業の加工貿易(輸出)を中心とした産業構造」であり、中国と同様に「管理変動相場性」を採用していることからも、為替レート(対米ドル)は、今後も緩やかなペースで「ドン安基調」が維持されると考えられます。それに加えて、ベトナム人の「自国通貨への信頼性」の観点からも、今後も資産形成を目的とした金製品への需要は相応に推移するのではないかと考えております。
このような俯瞰的な観点でみても、ベトナム特有の資産形成の手段としての金製品の中古市場の発達は、金製品の流動性(換金性)を高めることに寄与し、ボラティリティが小さくなることに貢献することからも、自然な流れといえるのではないでしょうか。
ぜひとも当地を訪れる際には、街中の金製品の販売店やアクセサリーショップを覗いてみてはいかがでしょうか。別の角度からベトナムの高度経済成長を感じることができるはずです。
以上、プロネクサスベトナムが、【ベトナムの日常生活 金(Gold)へのニーズ】をご紹介致しました。
次回は「ベトナムのIT業界:オフショア開発」となります。
プロネクサスベトナム現地レポート(2020年12月 VOL.15)
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